欧州出願について、分割出願は、最初に単一性に疑義がオフィスアクションで提示されてから24ヶ月間だけ許されるように、数年前に改正されましたが(2010年4月1日施行)、このたびの規則改正によりこの制限が撤廃されます。

http://www.epo.org/news-issues/news/2013/20131018.html

2014年4月1日に規則改正が発効し、それ以降の分割出願に適用されます。2014年4月1日以降は、先の出願が係属している限り(特許が付与されるまで)、分割出願は提出可能です。よって、時期制限で諦めていた分割出願も、2014年4月1日を過ぎれば可能になります。つまり、2010年に施行された規則は、なし崩しに意味がなくなるといえるでしょう。但し、2014年4月1日より前に特許が付与された場合には、以前の制限が効いています。

今回の欧州の規則改正で、第2世代以降の世代からの分割出願には追加料金がかかることも決まっています。要するに分割出願の分割出願には追加料金がかかります。

2010年4月1日の時期的制限の施行前は、欧州出願のそれぞれの分割出願できる時期のチェックで大わらわでしたが、あれは一体なんだったんでしょうか。分割に分割を重ねるような場合、EPOの方でも分割出願の時期的要件を満たしているかどうかチェックするのは大変だろうなと想像していました。24ヶ月しか期限がないので、とりあえず分割出願してしまえということで、分割出願が増加し、却ってEPOは大変になったということです。

欧州では、分割出願に対する迷惑審決として、審決T 1158/01(2004年7月13日)が知られています。ここでは、分割の分割出願(孫出願)が分割出願要件を満たすためには(出願日が遡及されるには)、孫出願のクレームが分割出願(子出願)のクレームに含まれていなければならないことが示されています。例えば、親出願のクレーム1がA、クレーム2がB、クレーム3がCだとして、子出願のクレームがBだとすると、Cについては親出願からなら分割できますが、子出願からは分割できないということでした。このときは、孫出願をすべきではないとか、孫出願の可能性を残すため分割出願では親出願のすべてのクレームを一旦コピーしておくべきだとか色々論議がありました。しかし、その後に出された拡大審判廷の審決G
1/05(2006年12月7日)、G 1/06(2007年6月28日)によって、このような要件は必要なくなりました。

分割出願への迷惑事例としては、日本では、キルビー判決(東京高裁平成6(ネ)3790、最高裁判所第三小法廷平成10(オ)364)が有名です。最高裁判決は、無効理由がある場合の権利濫用を認めない基本判決として知られています。高裁判決と最高裁判決での無効理由の1つは、原出願の発明と分割出願の発明は実質的に同一だから、分割出願は分割出願の要件を満たしていないので出願日遡及効が得られず、原出願の後願として拒絶というものです(もう1つの無効理由は特許法第29条第2項(引例は原出願拒絶査定と同じ)です)。

日本の場合、同一出願人の同日出願でも相違点が小さい場合に特許法第39条第2項で拒絶されることがあり、これも分割出願の悩みの種といえるでしょう。

そういえば、2007年に米国では継続出願を2回までに制限しようという規則改正案がありました。施行前にポシャってよかったです。

中国では、分割出願(子出願)に基づいて自発的に分割出願(孫出願)を提出する場合、その提出時期は親出願の状態に制約されます。親出願の係属中、特許許可の決定の日から2ヶ月以内、拒絶の決定の通知後3ヶ月以内、再審査またはその上級審の係属中のいずれかでなければなりません。但し、子出願に単一性の欠陥があるため、出願人が審査官の審査意見に基づいて再度分割出願をする場合はこの限りではありません(中国審査指南第1部 5.1.1 (3))。