イギリスのEU離脱は、欧州における知的財産権の取得や権利行使にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

まず特許ですが、イギリスが欧州特許条約(EPC:European Patent Convention)の締約国であることに変わりはありませんので、従来と変わりなく欧州特許庁(EPO:European Patent Office)を介してイギリスでの特許権を取得可能です。

他方で、商標と意匠はEPOではなく欧州連合知的財産庁(EUIPO:European Union Intellectual Property Office)が取り扱います。その名からもわかる通りEUIPOはEUの専門機関です。EU離脱が決まったいま、従来通りにEUIPOに出願してイギリスでの商標権や意匠権を無事に取得できるのでしょうか。
イギリスのある特許事務所からの速報によると、ロンドンやミュンヘンの彼らの事務所を介してEUIPOへの出願は可能だそうです。
おそらくは、欧州連合が既に付与した権利をイギリスにおいて再登録するといった措置を将来的には取ることになるだろうと彼らは予測しています。

来年2017年1月に発効する予定の欧州統一特許制度は、イギリスのEU離脱決定によりその発効時期が先延ばしされる可能性も出てきました。
それに、欧州統一特許裁判所の中央部のひとつはロンドンに設置されることになっています。EU離脱となればこの計画が消える可能性は高そうです。

イギリスには、EPOやEUIPOを介して海外から欧州への出願業務を受任している特許事務所が多数あります。速報を即日で送ってくるくらいですから彼らの危機感は相当なものです。
今後の成り行きを見守りたいと思います。